ドレミは英語で通じない?CDEFGAB表記の謎とCから始まる真相
子どもの頃から音楽の授業やピアノ教室で親しんできた「ドレミファソラシド」。世界共通の音楽用語だと思われがちですが、実は海外のレコーディング現場や英米圏のミュージシャンとのセッションで「Can you play Do(ドを弾いて)?」と伝えても、相手がポカンと首を傾げてしまうケースが珍しくありません。「ドレミ」は英語ではなくイタリア語に由来する言葉であり、英語圏の音楽実務では「C・D・E・F・G・A・B」というアルファベットの英語表記がデファクトスタンダード(事実上の世界標準)として機能しているからです。
そこで多くの人が抱くのが、「アルファベットの始まりはAなのに、なぜドはAではなくCから始まるのか?」という根本的な疑問です。さらに、世界的な名作ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌「ドレミの歌」で、なぜ「シ」の音が「Ti(ティ)」と歌われているのか、その背景には英語圏独自の論理的な理由が存在します。音楽理論の黎明期から現代のDTM(デスクトップミュージック)事情までを見据え、学校教育では深く触れられない「音名の真実」を徹底解明します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「ドレミ」はイタリア語発祥の階名であり、英語圏の現場で絶対的な音の高さを示す公用語は「C-D-E-F-G-A-B」である。
- 要点2:人間の出しやすい基準音「ラ=A(440Hz)」からアルファベットを順に振った歴史的経緯により、長調の主音である「ド」が「C」になる逆転が生じた。
- 要点3:英語のドレミの歌でシが「Ti」になる真相は、1文字表記にした際に「Sol(ソ)」と「Si(シ)」の頭文字「S」が重複するのを防ぐためである。
【衝撃の事実】「ドレミ」は海外で通じない?英語表記C・D・E・F・G・A・Bの基本ルール
海外に出て初めて「ドレミが世界共通語ではなかった」と知って愕然とする日本人ミュージシャンや学習者は後を絶ちません。クラシック音楽の発祥地であるイタリアやフランス、スペインなどのロマンス語圏ではドレミ(Do-Re-Mi)が音名として日常的に通用しますが、アメリカやイギリスをはじめとする英語圏では、音名(ピッチの絶対的な名称)としてアルファベットの「C・D・E・F・G・A・B」を用います。
英語圏の日常的な音楽会話やバンドのリハーサルで「ドの音を出して」と言いたい場合、口にするべき言葉は「Play the C(シーを弾いて)」です。仮に「Play Do」と言ってしまうと、英語の助動詞「do」と混同されたり、何を意図しているのか即座に理解されなかったりします。
ピアノの鍵盤上で白鍵を左から順に弾いたとき、日本語の感覚と英語表記は次のように完全に1対1で対応しています。
- ド(Do):C(英語発音:スィー / siː)
- レ(Re):D(英語発音:ディー / diː)
- ミ(Mi):E(英語発音:イー / iː)
- ファ(Fa):F(英語発音:エフ / ef)
- ソ(Sol):G(英語発音:ジー / dʒiː)
- ラ(La):A(英語発音:エイ / eɪ)
- シ(Si / Ti):B(英語発音:ビー / biː)
ポピュラー音楽のコード進行(和音)が「Cメジャー」「Am(エーマイナー)」「G7(ジーセブン)」と英字で表記されることからも明らかなように、現代のグローバルな音楽制作現場、楽譜、配信プラットフォームのメタデータに至るまで、すべての基本言語は英語アルファベットによって統一されています。

なぜAではなく「C」から始まるのか?音名がねじれた歴史的背景
誰もが真っ先に直面する最大の謎が、「なぜアルファベットの最初であるAが『ド』ではなく『ラ』なのか」という点です。A・B・C・D・E・F・Gというアルファベット順に倣うなら、ドをA、レをB、ミをCと割り振ったほうが直感的でわかりやすいはずです。この表記のねじれを解き明かす鍵は、西洋音楽の数千年にわたる歴史と「人間の声の出しやすさ」にあります。
古代ギリシャから中世ヨーロッパ初期にかけての教会音楽において、男性聖歌隊が無理なく歌える最も低い実用的な基準音が、現在の「ラ(A)」の音付近でした。10世紀頃に音名をアルファベットで整理した音楽理論家たちは、当時使われていた音域の中で最も低い基準音に対して、アルファベットの最初の文字である「A」を命名しました。この時代には、短調の響きに近い「エオリア旋法(ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ)」などが音楽の主軸だったため、Aから始まる音の並びは何の矛盾もありませんでした。
事態が変化したのは16世紀から17世紀にかけてのバロック期です。音楽理論の進化に伴い、明るく開放感があり、倍音の調和が美しい「長音階(メジャースケール)」、すなわち「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」が音楽の中心へと君臨するようになりました。その結果、元々の基準音であった「ラ(A)」から数えて3番目の音である「ド」が主音(キーの主役)となったため、「基準音ラ=A」を据え置いたまま、主音であるドが「C」から始まるという構造的なズレが定着したのです。
この名残は現代でも色濃く残っています。オーケストラが本番直前にオーボエの音に合わせてチューニングを行う際、全体で合わせる統一基準音はド(C)ではなく「ラ(A)」です。現在、国際標準化機構(ISO 16)で規定されている国際基準ピッチも「A = 440Hz」であり、西洋音楽の根底には今なお「A=ラ」が普遍の原点として息づいています。
ドレミの歌でシが「Ti(ティ)」になる真相|英語圏が変えた決定的な理由
1965年の名作映画『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌として世界中に広まった「ドレミの歌(Do-Re-Mi)」。英語のオリジナル歌詞を聴くと、最後のシの音が「Si」ではなく「Tea, a drink with jam and bread(紅茶はジャムとパンのお供)」と、「Ti(ティ)」で歌われていることに気付きます。
なぜ英語圏では「Si」をわざわざ「Ti」に変えたのでしょうか。その真相は、19世紀半ばにイギリスの音楽教育者ジョン・カーウェン(John Curwen)が普及させた音楽教育法「トニック・ソルファ法(Tonic Sol-fa)」にあります。
カーウェンは、五線譜が読めない子どもや民衆に合唱を教えるため、音階の頭文字だけを取り出した簡略表記(ハンドサインや文字譜)を開発しました。その際、ドレミファソラシをそのままアルファベットの頭文字にすると、次のような致命的な問題が発生しました。
- Do → d
- Re → r
- Mi → m
- Fa → f
- Sol → s
- La → l
- Si → s(Solの頭文字と重複してしまう!)
「ソ(Sol)」も「シ(Si)」も同じ「S」で始まってしまうため、頭文字1文字で音階を識別することが不可能になってしまったのです。そこでカーウェンは、シ(Si)の頭文字を意図的に変更し「Ti(ティ)」と定義しました。これにより「d・r・m・f・s・l・t」と全7音がすべて異なるアルファベットで綺麗に識別できるようになりました。
英語のドレミの歌の作詞者であるオスカー・ハマースタイン2世は、このトニック・ソルファ法に厳密に従い、「Ti」を身近な「Tea(紅茶)」にかけた見事な韻を踏む歌詞を完成させました。単なる語呂合わせではなく、実用的な教育システムの要請から生まれた合理的な工夫だったのです。

【多言語比較表】英語・ドイツ語・イタリア語・日本語の音名徹底比較
世界の主要言語における音名の表記法は、文化的・歴史的背景によって大きく4つの体系に分かれています。クラシック音楽の世界で今なお使われるドイツ語、ポピュラー音楽を支配する英語、日本古来の和名(イロハ)を整理した以下の比較表で、その構造的な関係性を一目で把握できます。
| イタリア語(階名) | 英語表記(発音) | ドイツ語表記(発音) | 日本音名(ハニホヘト) | 編集部の解説・注意点 |
|---|---|---|---|---|
| Do(ド) | C(シー) | C(ツェー) | ハ | ハ長調(C Major)の主音。ピアノの中央ド(C4)が基準。 |
| Re(レ) | D(ディー) | D(デー) | ニ | ニ長調はヴァイオリン演奏で最も響きが良い基本調とされる。 |
| Mi(ミ) | E(イー) | E(エー) | ホ | ギターの開放弦(第1弦・第6弦)のチューニング基準音。 |
| Fa(ファ) | F(エフ) | F(エフ) | ヘ | ヘ音記号(バス記号)の基準線(第4線)を示す音。 |
| Sol(ソ) | G(ジー) | G(ゲー) | ト | ト音記号(高音部記号)の基準線(第2線)を示す音。 |
| La(ラ) | A(エイ) | A(アー) | イ | 歴史的基準音。日本のイロハも「イ=A」から命名された。 |
| Si / Ti(シ) | B(ビー) | H(ハー) | ロ | ドイツ語圏ではナチュラルのシを「H」、シ♭を「B(ベー)」と呼ぶ。 |
ここで注目すべきは、明治時代に導入された日本の音名「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ」の経緯です。日本でもアルファベットの「A・B・C・D・E・F・G」をそのまま「イ・ロ・ハ・ニ・ホ・ヘ・ト」に対応させました。つまり、「A=イ」「B=ロ」「C=ハ」という規則正しい順序で翻訳されたため、長音階の基本であるCメジャーが日本では「ハ長調」と呼ばれるようになったのです。
【実態検証】スタジオ現場とSNSの生の声|「ドレミ」と「CDE」のギャップ
ソーシャルメディアや音楽クリエイターが集うオンラインコミュニティ(Xや知恵袋、DTM専門掲示板など)では、言語の壁にぶつかったリアルな体験談が頻繁に共有されています。
「海外のオンライン音楽スクールを受講した際、講師から『Play a G chord and resolve to C』と矢継ぎ早に指示され、頭の中で『Gってソだっけ、Cはドだっけ』と変換しているうちにセッションから完全に脱落した」という生々しい告白は象徴的です。クラシックピアノからDTM(パソコンでの作曲)やバンド活動へと転向したキーボーディストの多くが、「コード譜やDAW(音楽制作ソフト)のピアノロール画面はすべてC・D・E表記なのに、脳内がドレミで固定されているため瞬時に指が動かない」という深刻なタイムラグに悩まされています。
音楽プロデューサーやレコーディングエンジニアの証言によると、現場で「そこのミの音を半音下げて」と指示するのと「E♭(イー・フラット)にして」と伝えるのでは、作業効率に決定的な差が出ると指摘されています。世界中のプラグイン音源やシンセサイザーのパラメーターがすべて「C1〜C6」などの国際英語表記で設計されている現代において、英語音名の習得は趣味の枠を超えた必須スキルとなっています。

一般に知られていない盲点と誤解|「絶対音感・階名・音名」の致命的な混同
多くの日本人が英語音名の習得に苦戦する根本的な要因は、日本の初等教育における「音名」と「階名」の致命的な混同にあります。
音楽理論における定義は極めて厳密です。
- 音名(Pitch Name):周波数(Hz)に裏打ちされた、音の「絶対的な高さ」を示す固有名詞(C・D・E、ハ・ニ・ホなど)。調性が変わっても絶対に動かない。
- 階名(Scale Degree / Syllable):ある調性(キー)の中で、主音から数えて何番目の役割を持っているかを示す「相対的な関係名」。本来のドレミファソラシドはこちらに属する。
欧米の音楽教育では「移動ド(Solfege)」が主流であり、キーがGメジャー(ト長調)になれば、主音であるG(ソ)を「ド」と呼び替えて歌います。これに対し、日本の小学校や大手音楽教室では長年、どんな調性の曲であってもCの音を絶対に「ド」と呼ぶ「固定ド教育」が徹底されてきました。
その結果、多くの日本人は「ドレミ」を絶対的な音名だと完全に誤認したまま成長してしまいます。特に幼少期に強固な「絶対音感」を身につけた人ほど、「Gの音がドに聴こえる」という移動ドの柔軟な概念を受け入れられず、英語圏のミュージシャンとキーの移調(トランスポーズ)を議論する際に深刻な認識の衝突を起こしやすい構造が存在しています。
【プロの結論】英語音名を最速でマスターする判断基準と2026年最新の覚え方
英語表記の「C・D・E・F・G・A・B」を脳内でストレスなく扱えるようにするためには、「ドレミからの翻訳作業」を脳内から完全に排除することが唯一の近道です。おすすめできる学習アプローチと、避けるべき非効率な学習法の基準は明確に分かれます。
【今すぐ英語音名へ移行すべき人の条件】
- DTMやDAWソフトウェアを使った楽曲制作を行っている人
- ギターやベース、ポピュラーピアノでコード(和音)演奏を習得したい人
- 海外のミュージシャンとセッションやコラボレーションを行う機会がある人
- ジャズやポピュラー音楽の理論(テンションコードやスケール)を学びたい人
【慎重に向き合うべき人の条件】
- クラシック声楽や合唱を中心に活動し、固定ドによるソルフェージュ指導を受けている人
- 幼少期からの固定ド絶対音感が極めて強く、アルファベット変換により演奏の直感性が著しく阻害される初期段階の人
効率的な覚え方の極意は、「2つの基準アンカー(錨)」を鍵盤上に設定することです。
第1のアンカーは「C(ド)」です。ピアノの2本並んだ黒鍵の左隣にある白鍵が「C」であることを視覚的に焼き付けます。そして第2のアンカーとして、アルファベットの先頭である「A(ラ)」を意識します。「A」は3本並んだ黒鍵の間の右側です。「Cから順にC-D-E-F-G-A-B」と暗記するのではなく、「ド=C」と「チューニング基準音のラ=A」という2箇所の拠点を起点にすることで、音階のどの位置からでも瞬時にアルファベットを割り出せるようになります。
【ドレミファ ソラシド 英語】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:英語圏の人は「ドレミ」という言葉を一切知らないのですか?
A1:全く知らないわけではありません。『サウンド・オブ・ミュージック』の「ドレミの歌」を通じて、音階を歌うための言葉(Syllable)として広く認知されています。ただし、それは合唱の練習や教育現場で音程を取るための「階名」として認識されており、コード進行や楽器の特定の音を指示する「音名」としては、ほぼ100%アルファベット(CDEFGAB)が使われます。
Q2:シャープ(♯)やフラット(♭)が付いた音は、英語でどう発音しますか?
A2:英語では音名の後ろに「sharp」または「flat」を付けます。例えば「C♯」は「C sharp(スィー・シャープ)」、「B♭」は「B flat(ビー・フラット)」と発音します。楽譜の調号(キー)を表現する際も「Key of E-flat major(変ホ長調)」のように表現します。
Q3:なぜ「シ」の音だけイタリア語(Si)と英語(Ti)で母音まで違うのですか?
A3:11世紀にイタリアの修道士グイード・ダレッツォが考案した元祖ドレミ(当時はUt・Re・Mi・Fa・Sol・Laの6音)には元々「シ」がありませんでした。後から追加された「Si」は聖歌の歌詞「Sancte Iohannes」の頭文字に由来しますが、19世紀に英語圏で頭文字1文字による音階表記を導入した際、「Sol(ソ)」と「Si(シ)」の頭文字「S」が重複したため、衝突を避ける目的で人為的に「Ti」へと改変されたからです。
まとめ:音名と階名の本質を掴みグローバルな音楽リテラシーを手に入れる
「ドレミファソラシド」が英語圏でそのまま通じない理由、そして「C」から始まる一見いびつな並びの背景には、数千年に及ぶ西洋音楽の進化と教育者たちの合理的な試行錯誤の歴史が刻まれています。基準音「A(ラ)」の存在を知り、相対的な「階名」と絶対的な「音名」の役割の違いを正しく理解することは、単なる英語表記の暗記にとどまらず、音楽理論の本質に迫る知的体験でもあります。
国境を越えた音楽制作やインターネットを通じたセッションが当たり前となった現代だからこそ、ドレミというローカルな親しみやすさを尊重しつつ、世界共通言語である「C・D・E・F・G・A・B」の感覚を指先と耳に馴染ませておくことが、真のグローバルな音楽リテラシーへの第一歩となるはずです。 (出典: ドレミファ ソラシド 英語(Yahoo!ニュース))